
INTRODUCTION

自由はいつも 心の中に
ウッドストック映画祭長編映画賞・審査員賞・ハワード・ウェクスラー賞受賞、ハンブルグ映画祭観客賞受賞など世界各国の映画祭で19の賞を受賞している。1948年、ソ連統治下にあったアルメニア。1915年に起きたオスマン帝国政府によるジェノサイド、アルメニア人虐殺を生き延びアメリカに渡ったチャーリーが、自身のルーツを求め、故郷で暮らすために帰還する。ずさんな管理体制のもと冤罪で投獄されたチャーリーは、独房の窓から見える夫婦の生活に、まるで自分がそこで同居しているかのように楽しむ。どんな過酷な状況でも常に生きる希望を失わない、珠玉の没入型ハートフルムービー。監督・脚本・主演はアルメニア系アメリカ人のマイケル・グールジャン。祖父はジェノサイドの生き残りである。


STORY
1948年、ソ連統治下のアルメニア
無実の罪で収監されたアメリカ人
彼はただ、生きることを楽しみ続けた
無実の罪で収監されたアメリカ人
彼はただ、生きることを楽しみ続けた
幼少期にオスマン帝国(現在のトルコ)でのアルメニア人に対する迫害から逃れるためにアメリカに渡ったチャーリーは、1948年、自身のルーツを知るために祖国に戻ってくる。ソ連統治下にあっても理想の故郷に思えたからだ。ところがチャーリーは不当に逮捕され、収監されてしまう。悲嘆に暮れる中、牢獄の小窓から近くのアパートの部屋が見えることを知り、そこに暮らす夫婦を観察することが日課になっていった。いつしかチャーリーは夫婦の生活に合わせてあたかも同じ空間にいるかのように、一緒に食事をし、歌を歌い、会話を楽しんだ。ところが夫婦仲がこじれて部屋には夫だけが残され、時を同じくしてチャーリーのシベリア行きが決まってしまう。移送の期限が迫る中、チャーリーによる夫婦仲直り作戦が始まる――。

ARMENIA

アルメニア情報
西アジアに位置し、北にジョージア、西にトルコ、南にイラン、東にアゼルバイジャンと隣接する。第一次世界大戦中の1915年から数年にかけて、当時オスマン帝国の支配下にあった西部アルメニアでアルメニア人大虐殺が行われた。いわゆるアルメニア人ジェノサイドである。1918年のロシア革命後にアルメニア第一共和国として独立を宣言するが、1920年にはソヴィエト共和国に編入され、アルメニア社会主義ソヴィエト共和国となり、1922年にはソヴィエト連邦の構成国となる。終戦後もソ連統治下のままであり、スターリンはアルメニア復興のための労働力として1946年から48年にかけて祖国帰還運動を実施、本作の主人公のチャーリーも本運動によってアメリカから「理想の祖国」に帰還した者のひとりである。1991年のソ連崩壊に伴い、現在のアルメニア共和国が独立した。
2024年現在、人口約280万人、国土29800km2(日本の約13分の1)、公用語はアルメニア語、宗教は主としてキリスト教。アルメニアは世界で初めてキリスト教を公教として採用した国家である。在日アルメニア人は2023年時点で70人。ジョージアとイランとは良好な関係を維持しているが、アゼルバイジャンとは軍事衝突を繰り返している。ロシアとの関係は緊密であったが、アゼルバイジャンとの衝突に際して支援が得られず、現政権下では欧米との関係強化が加速している。尚、ジェノサイドを認めていないトルコとは外交関係がないままである。
本作で重要なモチーフになっているアララト山は旧約聖書のノアの箱舟が流れ着いたとされる山とされており、古くからアルメニア人が多く居住してきた地域のシンボルとされているが、ソ連崩壊後トルコによって侵略され、現在はトルコ領に存在している。だがアルメニアはこの国境を承認しておらず、国章にはアララト山があしらわれている。AWARD

